大判例

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宇都宮家庭裁判所栃木支部 事件番号不詳 判決

被告人 成田節子

主文

被告人を罰金五千円に処する。

右罰金を完納することができないときは金二百円を一日に換算したる期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となる事実)

被告人は栃木県小山市稲葉郷千七百七十七番地において「分喜志の家」なる屋号で芸妓置屋業を経営するものであるが昭和三十二年五月中旬頃から同年六月下旬頃迄の間十八歳に満たない児童なる本籍朝鮮慶尚南道○○郡×××××△△△番地H三女F子(千九百四十年十一月十八日生)を芸妓として雇入れ同女をして小山市内北原料理店外数箇所において同市自動車運転者O(当二十八歳)東京都○○区××××町△丁目土建業S(当五十八歳)外多数の男客を相手として約十回に亘り売淫せしめ以つて児童に淫行させたものである。

(証拠の標目)

右の事実は

一、証人H、同F子の当公廷における各供述

一、成田君江、R、O、Sの司法警察員に対する各供述調書(謄本)

一、土浦市長作成の登録済証明書

一、被告人の検察官並びに司法警察員に対する各供述調書

一、被告人の当公廷における供述

を綜合してこれを認める。

(法律の適用)

法律に照らすに被告人の判示所為は児童福祉法第三十四条第一項第六号、第六十条第一項に該当するを以つて所定刑中罰金刑を選択しその金額の範囲内において被告人を罰金五千円に処し右罰金を完納することができないときは刑法第十八条を適用して金二百円を一日に換算したる期間被告人を労役場に留置することとし、訴訟費用の負担については刑事訴訟法第百八十一条第一項に則りその全部を被告人に負担せしめる。

(弁護人の主張に対する判断)

(一)  弁護人は児童の年令確認についてはR、H及び児童本人に聞きただし同人らからいずれも満十八歳以上である旨を告げられたのでそれを信じたもので満十八歳未満の児童であることを知らずこれを知らなかつたことは被告人の過失によるものでない旨を主張する。

しかしながら児童を従業婦として住込ませようとするような場合には関係人及び児童本人が雇主に対し故意に年令を偽り満十八歳以上であるように装うことは稀有ではなく児童ら自身の年令告知が必ずしも真実と一致するものではないのであるから業者としてはそれ以上自ら進んで年令確認について戸籍謄本その他につき正確な調査をすべきに拘らず証拠によれば被告人はこれらの処置をとらず漫然同女の虚偽の年令告知を軽信して児童でないと誤信したというのであるからいまだもつて被告人に年令確認につき過失がなかつたものと謂うことはできない。

(Rの司法警察員に対する供述調書謄本記載、証人Hの当公廷における供述に徴すれば少女F子を雇入れの際に年令について話題になつたことすら認められないのでむしろ被告人に過失のあつたことが伺われる。)

(二)  弁護人は又被告人は淫行を強制したものでないことはもとより心理的圧迫をすら加えたものでなく淫行は同女の自由意思によるものである旨主張する。

しかしながら法律に所謂「淫行をさせる行為」とは淫行を強制勧奨する等積極的な場合は勿論、児童をして淫行に至らしめることを助成し若しくはこれに原因を与えるものと見られる一切の行為を包含する法意であると解すべきところ、本件の場合証拠によれば被告人は後で「だまされた」「嘘をつかれた」などと言われるのは嫌ですから「芸妓置屋といつてもどこでも同じ様に芸許り売るのではなく身も売つていること玉代の分配方法」なども話をし納得させた上で従業婦として雇入れたものであることが明らかであるから個々の売淫は同女の自由意思に基くものであるにしてもその淫行については原因を与え且つこれを助成したものと謂わなければならない、よつて右弁護人の主張はいずれもこれを採用しない。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 多賀谷雄一)

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